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絶望以下の社会で〜秋葉原通り魔事件と派遣法〜
評価:
湯浅 誠
¥ 798
コメント:湯浅さんに政治を目指してほしくもあり、政治家になると利害調整が出来なくなるので無理かとも思いで、でも、政権交代、震災を経て、それでも言ってることはまっとうだと思う。ただし経済とは噛み合わない。

 遅ればせで書こうか迷ったがやはり書いておきます。切れのない文章ですがご了承を。
連日被疑者の思惑通り、秋葉原通り魔事件が話題になっている。
加藤容疑者の行動のいずれもが私には異常に見えない。

 彼が携帯に事件の逐一を詳述したのも、多分誰かが止めてくれるのを待っていたのだと思った。
 自殺未遂者は思いつめて死を選ぶ中に無意識に、たとえば知人に痕跡を残すとか、橋から飛び降りる際に内陸へ飛び込むとか生への執着を見せるという。(矢貫隆『自殺―生き残りの証言』
 誰か止めてくれよ、まだ間に合う、まだ間に合う
そんな気持ちが秋葉について、歩行者天国が始まってからの20分ほどのインターバルに透けて見えた。誰か止めてくれるかもしれない、やめろと書き込みがあるかもしれない…
 でも、ネットは基本的に冷酷なツール。誰も止めてくれなくてやっちまった。

 そんなに苦しいなら「いのちの電話」にでも電話すればよかったのだ。
“人と話すのはいい”ものなんだから。

 以前取り上げた桐野夏生『メタボラ』に今回の事件の背景になった地方の工場での派遣労働の描写がある。主人公はそこでどんどんどんどん生気を失って、自殺未遂に至る。
 今日の東京新聞『自動車絶望工場』でトヨタの期間工を批判したルポを書いた鎌田慧さんがインタビューで、派遣法の改正(2004年)以降の日本の短期労働者の雇用状況が、1980年代の期間工よりもはるかに厳しいものであるということを語っていた。加藤容疑者はトヨタの期間工の採用にも落ちていて、雇用の最下層で将来の展望もなく喘いでいたという。

 「もやい」湯浅誠氏が貧困について興味深いことを語っていた。
 貧困と貧乏は違う。
 貧乏は金がないだけだが、貧困とは3つの「溜め」を失うことだ。
経済的な「溜め」、人間関係の「溜め」、そして自分自身の「溜め」
 経済的な「溜め」とはもちろんお金だ。
 昔から貧乏な奴というのは世の中たくさんいた。でも、飯食わしてくれる友だちとか、ちょっと金貸してくれる友だちとかはそれなりにいて、それなりに貧乏でも人生楽しく回っているものだったのだ。
 それがいまや、携帯電話で薄くなった人間関係は急場の助けにはならない。人の「溜め」を持っていない人は経済的な「溜め」を失うのも早く、最下層で人にののしられ、モノとして扱われ、遂には人間としての自信を失う。それこそが貧困の決定打、自分の「溜め」を失うことなのだという。

 加藤容疑者に問題がないとは言わない。はっきり言って好きになれないし、友達にもなりたくないし、顔が不細工以前に言い訳が多すぎで努力不足。
 でも、他は彼は「普通」で、普通の人が「溜め」を失って、生きていてもしょうがないと凶行に走るのは、本当に彼だけのせいなんだろうか?そもそも昔はもう少し人間関係の「溜め」はまじめに生きてれば自然にできてたものなんだよ。
それを壊したのは2004年の派遣法の改正(by小泉純一郎)だと思う。

 ワーキングプアの元凶とされてる悪法だが、この法律のもっとも極悪なところは、職場での人間関係を成立させなくしたことだ。たとえアルバイトでも長期で働いているとその職場での横のつながりができる。しかし、間に派遣業者を挟むことで労働者を孤立させ、交換可能な資材レベルまで落とし込んだのがこの法律の本質である。労働とはただ体を動かすことじゃなく、喜びがなければいけないものだ。でも、2004年を境に労働の意味と喜びが法律で剥ぎ取られてしまった。
 更に、労働の切り売りを一般化させ、特殊技能を持たない労働力を市場で安く流通させたことは企業側には一時的なメリットはあったものの、彼らの人生を「安い犯罪」で失っても惜しくないようなものにデフレさせてしまった。
 結果が未曾有の犯罪の増加だ。 

 そりゃそうでしょ。一度堕ちたらもうまともな職が得られないなら、振り込め詐欺でも強盗でも援交でも金属泥棒でもやらなきゃ食えないのが人間の体。
 日本の治安が世界中でもっともよかったのは「一億総中流化」といわれた格差のなさ故。少なくともそのころ、犯罪は「失うもの」と比べて割が悪かったのだ。
 ところがいまはホームレスやネカフェ難民をするくらいなら、人を殺して無期懲役になったほうが生活が楽という時代である。今はまだ若いその予備軍たちが将来に展望を見出せないまま、年老いたなら、日本は間違いなく衰退の一途をたどるだろう。

 政府の施策がすべて場当たり的でいらつく。
 国会は「後期高齢者保険」問題でもめているが財源がないなら優遇すべきは後期高齢者ではなく、困窮するシングルマザーや安定した生活を築けないワーキングプアだろう。でも子どもには投票権がないからこの国の児童福祉はありえないほど手薄い。

日本は安心して子育てできる国ではない。
日本は安心して働ける国ではない。
そして、日本は安心して老いていける国ではない。


 何かの弾みで「ライン」から外れて、格差社会に飲み込まれ、秋葉原で人を刺して回る自分を想像して、あなたはぞっとしないか?
 私はぞっとする。
 だって、たぶん、そのとき、この国には何の救いも助けも用意されてないだろうと思うから。
 労働者派遣法の改正がなければ、労働者の使い捨てはやまない。廃止を望む。
労働者派遣事業 WIKI
もやい公式HP:http://www.moyai.net/
反貧困―「すべり台社会」からの脱出 (岩波新書 新赤版 1124)
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湯浅 誠
メタボラ
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桐野 夏生
自殺―生き残りの証言 (文春文庫)
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矢貫 隆
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