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オカマに美しい老後なんてないのよ!〜メゾン・ド・ヒミコ&青い棘〜

映画『メゾン・ド・ヒミコ』と『青い棘』をテキストにゲイのエイジングについて書きます。

 アナザーカントリー以来の耽美デカダン映画というので『青い棘』という映画を見てきた。(画像1枚目)監督はアヒム・フォン・ボリエス、主演は『グッバイレーニン』のダニエル・ブリュールである。物語は第二次世界大戦直前のドイツのギムナジウム(寄宿学校)の同級生の男色を含むやや複雑な三角(四角?)関係である。
「僕らは一番美しい瞬間にこの世を去るべきだと思わないか?」
というコピーがついている。
 主演の二人の年齢的な無理と美貌不足で私としてはやや不満の残る作品だったのだが、作品の半分を占めるパーティーのシーンがいい。将来の見えない不安な時代に対比される青春時代の美しさと愉しさ。瞬時に移ろいゆく幸福、後に残る漠たる不幸から逃れるための死への誘惑。酒、ドラッグ、セックス、夜通し続く若者たちの饗宴のシーンを見て私が連想したものは、何千人ものゲイが集まることで有名な新木場のagehaのクラブイベントだった。
 集うゲイたちは着飾り、その肉体美を誇示し、アルコールと音楽とセックスを堪能する。やがて夜が明け、この夜が永遠に続けばいいのに、そう願う彼らの踊り疲れた顔を照らす残酷な朝日。ふと私は思った。10年後ここはもう私の居場所ではない。50年後、私たちはどうなっているんだろう、美しくなくなった私たちはどう生きていけばいいのだろうと。

「みんなで一緒に住んだら寂しくないかと思ったけど、一人ずつ櫛の歯が欠けるみたいにいなくなっちゃって・・・」

 ゲイ専用の老人ホームを描いた犬童一心監督作品『メゾン・ド・ヒミコ』で、心優しく気の弱い元銀行員山崎さんの台詞である。
 メゾン・ド・ヒミコは微妙にゲイ映画ではない。何しろ主演の柴咲コウの父親のヒミコも、脳溢血で倒れるルビイさんも元はストレートで子供がいる。そして物語の中心は死期近いヒミコと沙織との和解に据えられている。(トーチソングトリロジーの母子対決の逆バージョンである)更にゲイであるオダジョー演じる春彦が柴咲演じる沙織に手を出そうとするなど、ゲイとして実にあるまじき行為の現実感のなさが賛否あるところなのだが、私個人としてはすごくリアルで切なくて痛い映画だった。
  この映画には3つの「外の視点」が用意されている。?ホームの前に住む「オカマなんてかかわりたくないわ」と思う婆さん?ホームにいたずらする悪ガキたち?ダンスホールで女装の山崎さんを侮辱する元後輩。
 沙織の立つ場所はホームと「外の視点」の中間。最初は嫌悪していた父親ヒミコの位置を少しずつではあるが理解する、でも許せないという位置である。ホームと外との軋轢のエピソードがいくつか描かれる。
 ゲイである私が言うと実も蓋もないが年老いた「オカマ」は気持ち悪い。何で気持ち悪いのかしらと思ったら、ゲイには「お父さん」や「おじいさん」になるチャンスがないということに気づいた。ノンケは社会の中で結婚し、子をなし、孫を抱くことで「去勢」される。お父さんと呼ばれることでお父さんになり、お爺さんと呼ばれることでお爺さんに化ける。ところがゲイはその変容の機会を奪われている。子を為すことはもとより、結婚さえ出来ない。我々は年老いても少なくとも内面は「お兄ちゃん(お姉ちゃん)」のままだし、享楽のうちに「大人」になれぬまま壮年を迎える。年老いた子供、しわだらけの赤ん坊。そして家族を為さぬ我々を迎えるのは独居老人の孤独死である。そんなことを思うほどにどんどんく暗ーくなってきた。
 一人で年を重ねるのは辛すぎるから誰かと一緒にとりたいなあ、と思った。山崎さんみたいに結局は寂しくても、みんなで住めたらいいなあと思った。しみじみ思った。この映画は我々に「ゲイの老後」について大真面目に考えさせる映画なのだ。

 オダジョーとヒミコを除いて映画に出てくるゲイたちはあまり美しくはない。(高級老人ホームに住めるだけの経済力は羨ましいけど)こんな晩年なら「青い棘」みたいに美しい時代に死んでしまえばよかったと思うかもしれない。でも、そんな美しくもないゲイたちが「受容される」(或いは受容する)シーンがところどころに散りばめてある。それが泣ける。辛くて、しょっぱくて、切なくて、みっともない人生だけど、でも、生きててよかったかもーと思う素敵な瞬間。まるで魔法のように顔が緩んでしまう。その魔法は劇場でそれぞれが確かめてほしい。
 柴咲コウの最初から最後までのすっぴん仏丁面もとってもキュート。上映終了間近。レンタル開始も間もないけど、ゲイにはぜひ見て欲しい作品。劇場へどうぞ。

追記)行き詰った「メゾン・ド・ヒミコ」の感想文を「青い棘」と合わせて老人問題にすりかえるというありえない大技の記事ですいません。「青い棘」は面白かったけど30歳近い二人に19歳を演じさせるのは無理がありすぎ。アウグスト・ディールはジェレミー・アイアンズみたいでした。『オスカー・ワイルド』のジュード・ロウや『ドライ・クリーニング』のスタニスラス・メラールほどに美しければ説得力があるのに。たださすがにドイツ映画!ふいに「ルードウィヒ」を思わせる濃厚な汗と体液の匂いが立ち籠めたドキッとさせるシーンを見ることができます。こちらは渋谷Bunkamuraで公開始まったばかりです。
追記2)最近LEONが「もてるオヤジ」、「小洒落たオヤジ(艶男;アデオス)」をテーマに創刊して話題だけど、あれは去勢を拒んだノンケの理想像なのね(誌面ではモデルがやってるからかっこよく見えるが巷の腹出たおっさんがやったらただのセクハラオヤジ!)。美しく老いたゲイ(GmenでいうMGね)と実はとても近いのだけど、浮名を流すドンファンの末路は孤独と決まってるの。孤独の覚悟のないドンファンはかっこよくないのだけど、みんながそんなにハードボイルドだとは思えないなあ。


青い棘公式HP:http://www.albatros-film.com/movie/lovein.html
メゾン・ド・ヒミコ公式HP:http://www.himiko-movie.com/
ageha:http://www.ageha.com/gn/



(関連記事)「青い棘」のアヒム・フォン・ボリエス監督:現代にも通じる「自分とは」

 美ぼうの青年たちの愛と苦悩を描いたドイツ映画「青い棘(とげ)」が、29日から東京・渋谷のル・シネマで公開される。寄宿学校に通う青年が友人を射殺した後、自害した「シュテークリッツ校の悲劇」を題材にした作品。アヒム・フォン・ボリエス監督=写真=は「青年たちが投げかけた『自分は一体何なのか』という問いかけは普遍的で、現代にも通じるはず」と語る。

 1927年のベルリン。パウル(ダニエル・ブリュール)は、ギュンター(アウグスト・ディール)の別荘で週末を過ごすことになる。労働者階級出身のパウルと上流階級で育ったギュンター。性格も異なる2人だったが、愛や人生について語り合い、自分たちの死に関しても誓いをたてる。

 「1920年代は、二つの世界大戦に挟まれ、若者にとってもドイツにとっても、罪のない時代だった」とボリエス監督。さらに「政治的、イデオロギー的な“真空状態”は冷戦後の現代に似ている」と話し、「だからこそ、主人公たちが『自分とは』と自問する心情は、現代人にも理解できるのでは」と続ける。

 ラストで、ギュンターはパウルとの誓いに決着をつける。「彼が誓いを実行に移したのは、度が過ぎているかもしれない。でも、私もロマンチストだから、彼が50歳になって普通の会社員になっている姿は想像しがたかったんだ」
(2005年10月21日 読売新聞)

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グッバイ、レーニン!
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ダイング・アニマル
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フィリップ ロス, Philip Roth, 上岡 伸雄
老人と性と結婚を描いた名作。引用でご紹介!: それほど昔のことではないがかつては老人になるという決まった形があった。ちょうど若者であるという決まった形があったのと同じようにどちらももはや成り立たない。この国では許容範囲に関する大きな闘争があったーそして価値観がひっくり返ったのだ。とはいえ七十歳の男が人間喜劇の好色な面に関わることは適切なのだろうか?老人でありながら人間的な興奮に影響を受けやすく禁欲生活から厚顔無恥なほどかけ離れた生き方をすることは?それはかつてパイプや揺り椅子で象徴されていた状態ではない。おそらくそういうことはいまだに人々に対するちょっとした侮辱なのだろうー人生の老齢という時計に従わないということは。私は自分が高潔であるという評価を他の大人たちから得られないことはわかっている。しかしこの事実をどうしたらいいのだろう?私に言える限りどんなに歳をとったところで何も、何一つ休ませるわけには行かないという事実を?


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コメント
はじめまして。以前ヤジキタでTBを頂いて、それ以来通わせて頂いています。
ここでメゾンドヒミコのレビューを拝読し、これは見ないと損をする!!と思い、そのまま劇場へ直行してしまいました。ホントに見てよかったと思いました!
所々の山崎さんの言葉は沁みました・・・。
| noma | 2005/11/13 11:04 PM |
>nomaさん
はじめまして。そろそろ公開終了ですね。(今日MNJのWANTEDにメゾンドヒミコに来てた人の呼びかけが載ってて、まだやってるんだと思った)
本文に書かなかったことですけど、友達からヒミコと春彦の関係が希薄な印象をもったという感想を聞きましたが、確かにそこは手薄。ゲイの親子関係ならやはりトーチソングトリロジー的なもののほうが自然だし、ゲイの男の子供というのはちょっと現実的でないとの印象も深いです。でも、今の時代に照らせばそれでもゲイの老後という重いテーマをここまでの形にしたのだから、一見の価値はあると思うのです。
 拙文を読んで劇場まで足を運んでいただいて光栄です。
| machida_syuji(管理人) | 2005/11/13 11:32 PM |
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老後のこと
退職した会社の厚生年金基金が解散して、その清算 による諸手続きに関する案内書が届いた。普段はあ まり先の事は考えていないが、ふと老後の事が頭を よぎった。おそらく一生独身だろうし、老後は面倒 をみてくれる子孫もいない。一人寂しく死んで行く
| くわぁむらっぷ | 2005/11/08 12:09 AM |
メゾンドヒミコ
優しくて哀しい切なくて温かい。見てよかった。ホントにそう思った。
| ASIAN BABY | 2005/11/13 11:06 PM |