評価:
幻冬舎 (2017-06-21) コメント:ゆるーい本ですが面白かった。啓蒙本のように誰かにこれを「するべき」って言わないとこがいいですね。 |
同じく今週BSフジでザ・ノンフィクション『会社と家族にサヨナラ〜ニートの先の幸せ〜特別編』が放送されていた。昨年放送されたものに住人たちの近況を収録した特別版である。
このドキュメンタリー、昨年たまたま後編を見ておもわずニコ動で探して前篇視聴したのだけれど、考えさせられることが大変多い。記事末のニコ動のリンクから昨年放送されたものが見られるので是非ご覧いただきたい。
内容は日本一有名な元ニートphaさんは京大卒業後しばし就職するもやっぱり駄目だと28歳で会社を辞めて、その後10年以上定職につかず好きなことをして暮らしている。番組ではそんなphaさんに4年以上密着している。
「僕はなんか割と今みたいな(生活)が続けばいいなあと思ってるだけで、それぞれの人がそれぞれにできる精一杯をやってればそれでいいと思うんですよね。そうしないと使えない人間は全員死ぬべきみたいな感じになっちゃいがちなので…」
phaさんの住むギークハウスは、おもに理系の働かない人、働けなくなった人、居場所をなくした人、寂しい人が集まるシェアハウスで、退職後phaさんがブログで呼びかけてそれに賛同した人が集まったのがきっかけ。金でも食べ物でもある人が出して、ない時にはもらう。phaさんによるとギークの間にはそういうなんでも仲間で分け合いそれを楽しむ文化があるという。ギークハウスは4年の間に3回くらい引っ越しをし、メンバーも都度都度入れかわる。今は漫画家として独立している小林銅蟲さんもそのメンバーにいた。
銅蟲さんはとにかく人に怒られるのがいや!怒られることが自分の身になると考えられるようになったのはごく最近で、怒られると自分を否定されたように感じて相手を嫌いになってしまう。それで仕事が長続きしない。そんな銅蟲さんでも、マンガと料理の腕は異能で、常人が思いつかないような食材を思いつかないような方法で料理に仕立て上げ皆に振る舞い、更にそれを漫画にしてしまう。番組内でなれた手さばきですっぽんの首を落とし、イノシシの子供の肉を電動ノコで真っ二つにする。ああ、この人天才だなあと思ったけれども、普通の社会ではなかなか生きづらそうではある。(でも、縁あって素敵な美人の嫁がいる)
phaさんはこう語る。
「仕事とか苦手な人多いですからね。仕事が苦手というか、社会が苦手というか、人とうまく付き合えない。そういう人がいっぱいいて、集まってるだけちょっとマシって感じがあるので、みんなちょっとでも集まれればいいって思うんですけど。…
別にホームレスまでほんとにいってる人は少ないけど、ほかに引っ越したいけど住める場所がないから、なんかいやいや人の家に居候しているとか、実家で辛い思いをしてるみたいな人は結構いるんですよね。そういう人に「おまえ家出たらいいよ、家出て東京に出て来いよ」って言えるようなそんな場所があったらいいなあと…。
自分も結構不適応な方だし、今はたまたま働けてる人もいるけれど、どっちが偉いというもんでもなく、それはほんとたまたまでしかないなあと思います。なんか働けない、何で普通のことができないんだろうかとか、自分は社会にとって害な存在なんじゃないか、とかありますね。そんなこと思わなくていいと思うんですけどね。その人がその人なりに頑張ってればそれで十分だし、それで生きていけなかくてもその人は悪くないし、自分一人で生き残っても仕方がないなあと思うんですね。周りに面白い人とかいてほしいし、そう思ってシェアハウスとかやってますね。割とそういう人が面白いと思うんですよね。だから面白い人には生きててほしいし、面白い人ばかり集めると、厄介な人間ばっかになってるって感じなんですけど…。(笑)
私も割と不適応です。
がっつり組織に属しているときは飲めた泥が最近まったく飲めない。そうなるとそのコミュニティの中で何らかの烙印を押されがちです。でも、その判定と私の能力はイコールではない。社会の中で自分がそう思うことが意外に難しいことに気づきました。特に若く経験が浅い間は。結局、組織の中で人格と能力を丸ごと判定されて、使える奴か使えない奴かを分別される。
ようやく安倍政権の終焉が見えてきましたが、かの政権が目論んでいる「働き方改革」なるもの、まさにそういうものです。効率重視。その効率とは支配者や資本にとっての効率でしかありませんし、それは数字しかみない効率なのです。
でも、そういうシステムでは小林銅蟲さんのような才能は拾えないのです。
この番組に続けて、冒頭で紹介した池上×三輪対談で、美輪さんが近年のLGBTブームやについて述べたことを取り上げたかったのですけど、すいません、DVDがうまく再生できず引用できません。(ちなみに再放送が4月22日(日)13時からBS朝日であります)
2つ並べると、セクシュアリティの違和を感じている人たちと、社会とうまく折り合えなかった小林銅蟲さんたちとは似ているなあと思います。たぶん今までの会社や家族というコミュニティに仮面をかぶって参加して、実はいろいろなことに傷ついてしまう、それこそ逃げられるところがあるなら逃げたい、そういう思いを持って生きてる人間は少なくないのでしょう。
私も進学を契機に故郷から逃げ、そのあと、逃げて逃げて逃げ続けましたが、(そうしないと結婚から逃れられないと思った(゜-゜))、逃げたくても逃げ切れず親や会社に食べられてしまったLGBTもたぶんおるのでしょう。逃げた私とて最初から逃げずに済む環境が整っていたら、どれだけそれに無駄なパワーを使わずに済んだだろうと、無駄に削られたMPを振り返って思うのです。
性的関係にどういうルールを設けるかは難しいけれど、LGBTにも気軽に「逃げてくれば?」と言えるような場所、あればいいなあと思います。ギークハウスはphaさんの人徳と、集う人の気の弱さで成り立っている気もするので、なかなか、不適応者全般に広げるのは難しいでしょうかね。
いずれにしろ、学校と会社という、今まで日本人すべての行動を支配していたともいえるコミュニティの保護機能も支配機能も弱っていて、それに代わる共助のシステムを個々が作っていく時代になってきたように思います。
■ザ・ノンフィクション『会社と家族にサヨナラ〜ニートの先の幸せ〜』(ニコ動 多分見られます)
■ブログ:ザ・ノンフィクション 会社と家族にサヨナラ前編ネタバレ&感想